カテゴリ:画家( 13 )
島崎蓊助
安曇野市の有明美術館で9月10日~10月11日と
開催されていた「島崎蓊助展」。

島崎蓊助は洋画家です。
生前、62歳のときに一度個展を開催したのみで、
その後1992年に83歳で亡くなるまで
作品が公に出ることがほとんど無い希有な画家です。

そして2002年に群馬の大川美術館が開催した作品展より、
島崎蓊助の生き方やとりまく環境、徹底した芸術研究が
注目されるようになった とのことです。

今回はその生前の一度きりの個展で発表された、
ドイツの街並みや風景を描いたセピアの作品と
戦時中に中国で描かれた戦場のスケッチや
蓊助の芸術研究が記された「ノオト」と呼ばれる記録などが
展示されていました。

戦時中に描かれたスケッチを見ると、卓越した技術を持っていたことが
よく判ります。
芸術論を記した「ノオト」を見ると、蓊助の芸術に対する知識や姿勢、
追究心の高さが窺えます。

セピアの作品はドイツの街並みが燃えているような激しい画面で、
一見すると衝動的に描きなぐったようですが、じっと見据えているうちに
道であったり窓であったり屋根であったりが画面の奥から浮かび上がり、
己の芸術観に忠実に描かれたものだと感じました。

蓊助は60歳まで目立った絵の活動をしておらず、
戦中は陸軍報道として中国で戦場のスケッチをし、
戦後は父親の島崎藤村の遺した作品の全集の編纂をしていました。
そして編纂を終えてドイツに渡り、個展に向けて制作します。

これまで描けなかった葛藤と、解放された勢い。
でも描ける喜びに満たされているようでもなく、
時間をかけて構築してきた自分の芸術理論を満を持して体現するという
決意と覚悟のようなもの。

ひょっとしたら兄のようにただひたすら描きたかったのかもしれないし、
父(島崎藤村)の全集の編纂に追われずに制作に没頭したかったのかも。

その逆に、描き続けることに興味が無く、
発表することに重きを置かなかったのかもしれない。
兄と同じ方向に進まないことも、父の全集の編纂も
自ら望んだ枷かもしれない。

描けなかったのか
描かなかったのか

いろいろと考えさせられた展覧会です。



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by HiDe-pastel | 2010-10-24 21:22 | 画家 | Comments(0)
清宮質文
この夏から秋にかけて、大小さまざまな作品展を見に行きました。
そのうち、印象に残った2つの展示。

「清宮質文展」 (須坂市版画美術館)
「島崎蓊助展」 (有明美術館)

まず今回は「清宮質文展」の感想を。

長野県須坂市にある須坂市版画美術館で
7月15日~8月31日まで開催されていました。
木版、水彩、ガラス絵など、個人コレクターが収集した作品を主とした
35点の展示です。

清宮質文は木版画家です。
木目と湿気のある色使いと詩の一篇のような作風、
哀しいとか切ないという感情を暖かく描ける人 という印象を受けました。

何かが過ぎ去る寂しさ、何かが終わりかける寂しさ、
一日の終わりだったり、夏休みの終わりだったり、
放物線の頂点を過ぎた後に見える情景、

現実と異相世界のはざまでやじろべえのように絶妙なバランスを
とっている、

そんな印象です。

個人的に惹かれたのが色の使い方。
中間色の微妙な色合いが作品全体に用いられ、
静寂な世界を心地よく満たしています。

ろうそくのシリーズがありまして、小さな作品で
火の灯ったろうそくが立っているシンプルな画面。
ふと、以前見に行った高島野十郎を思い出しました。
高島もろうそくの連作を描いています。
共通して静謐な世界。


また機会があったら見てみたい作品でした。



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by HiDe-pastel | 2010-10-23 10:50 | 画家 | Comments(0)
小浦昇
20数年ぶりにバリカンで髪を刈りましたよ。
いやー、自分の顔が見慣れないものになってる。


先週の土曜日、名古屋に「小浦昇 銅版画展」を見に行ってきました。

主に月をテーマとして、青を基調とした作品が有名です。
内容は童話的で寓話的。作品の一つ一つに話があり、世界があり、
外国のファンタジーのようでもあり、宮沢賢治の世界のようでもあり、
静かで幻想的な作品です。

10年ほど前に小浦さんの作品を知りまして、小品はたまに
見る機会がありましたがまとまった展示は見たことが無く、
今回、絶版となっている作品を含めた代表作の展示ということで
この機会を逃すともう次は無いと思い、急きょ最終日に行ってきました。

参議院選挙の前日と言うこともあり、面した道路では各党の候補者が
声の限り叫び合い、ギャラリーにとっては致命的な喧騒でしたが、
それでもその喧騒を一蹴するほど、小浦さんの作品世界は
見る人を惹きこんでくれます。
しばしギャラリーのスタッフの方ともお話しさせていただきまして、
短いながらも充実した時間を過ごすことができました。

それにしても、やはり名古屋は暑かったです。
夜の松本が寒く感じるほどに。


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by HiDe-pastel | 2010-07-12 22:50 | 画家 | Comments(0)
二川和之
 高崎の百貨店の美術ギャラリーで
日本画家の二川和之さんの展示を拝見しました。

 二川和之さんのことはまったく存じあげず、
たまたまどこかのギャラリーのHPで作品を見つけて
瞬時に気に入ってしまいました。

 作品は日本画で主に風景画。
奥入瀬渓谷や屋久島の、水を含んだ空気が漂う静な世界。
特に遠景の靄のかかったような描写が繊細で
それが透明感を際立たせてます。

 なかなか展示の情報が入ってこないのですが
もう一度見てみたい作品です。




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by HiDe-pastel | 2010-03-03 04:20 | 画家 | Comments(0)
酒井駒子
 絵本作家の酒井駒子さん。

 作風はどこか寂しげで怖いという印象があります。
表紙を描いた 『クロニクル千古の闇』 シリーズの印象が強いのかも。

 原画展を拝見する機会がありました。 

 絵本 『BとIとRとD』 の原画をはじめ、話題になった 『くまとやまねこ』、
うさぎが主人公の 『ゆきがやんだら』 などの原画も展示されていました。

 全体的にはモノトーンで、例えるなら漆喰の壁に絵を描いたような感じ。
(たぶんアクリル絵の具ですが実際どう描かれているのかは判りません。)

段ボールに描いたり布やボタンを貼り合わせたり
素材を効果的に使っているものもあり、これが印刷されて本になったときに
実にいい雰囲気を生み出しています。

 また、描かれている女の子の表情やしぐさが
うちの子にまるでそっくり。設定年齢が近いからか、瓜二つです。

 『くまとやまねこ』 も良かったです。
一見銅版画かとも思う絵のシンプルさが物語とシンクロして
じんわり沁みてきます。

 大切なものを亡くしたクマがまた自分の足で歩きはじめる。

 難しいテーマをごく自然に伝えるってすごいことです。




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by HiDe-pastel | 2009-11-24 00:23 | 画家 | Comments(0)
犬塚勉
 犬塚さんは画家であり教員でもあります。

 登山を通して自然の奥深くと対峙してきた方で、
1988年、38歳のときに谷川連峰で遭難。
尾根まで出たところで力尽きてしまいました。

 初期の作品は、たとえば草原の草の一本一本、石場の石の一つ一つを
すべて描き切る、精緻で有無を言わせない圧倒的な作品。

以降、ブナ林~石と水へとモチーフを求めるに従い、
画家の精神面が強く前に出るようになります。

 以前、長野県東御市の梅野記念絵画館で開催された展示を
拝見したことがあります。

 もう、最初の作品から言葉が出ませんでした。

緻密さにも驚きましたが、それを描き切った犬塚さんの情念に
圧倒されました。
石と水をモチーフにした作品などはもう哲学の領域で
今の私と同じ年齢でそこまで到達しえたことにも驚きです。

 制作の途中で
「水が描けないから見てくる」
と出かけた谷川連峰で遭難。

 そこまで行かなければ見られないもの。
たぶんそれは目の前の風景ではなく、そこに行くことで達する
高い精神世界だったんじゃないかと思います。




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by HiDe-pastel | 2009-11-12 03:33 | 画家 | Comments(2)
いせひでこ
 私がいせさんを知ったのはつい最近のことで、
『絵描き』 という絵本を勧められて読んでみたのが始まりです。

 スケッチ調の画風が丁寧に描かれていて
映画を見ているような構図にどんどん引き込まれていきます。
なんとなく宮崎駿の描く水彩画に似ている気も。

 以前、企画展で原画を拝見する機会がありました。 

 ゴッホとテオの兄弟を描いた 『にいさん』 。
原画は横長のアクリル画。
想像していたより大きく、印刷では出ない原画ならではの
色の鮮やかさに驚きました。

 絵の深みにはまっていき孤立していく兄と
反発しながらも兄に憧れる弟を、回想を通して描いた作品。

ゴッホの人物紹介ではなく、たとえばゴーギャンとの出会いも
名前は出ずに「そんな人もいた」という感じで
あくまである2人の“兄弟”の話として綴られていたのが印象に残りました。

 植物学者と少女のやりとりを描いた『大きな木のような人』。
こちらはスケッチ調の水彩画。
パリの植物園が舞台とあって、画面はいろんな植物の色で
見た目にも楽しい作品です。

 小学校の高学年か中学生ほどの日本人の女の子が
パリの植物園で植物学者と知り合い、春から夏~秋と
その植物園でいろんなことを学びながら過ごすお話。

読んだあとは気持ちが静かになります。

木のシリーズということで
『ルリユールおじさん』 、『チェロの木』 もまた
気持ちの落ち着くお話です。




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by HiDe-pastel | 2009-10-03 00:40 | 画家 | Comments(0)
和田誠
 安曇野市の安曇野絵本館で
<和田誠 絵本館> という企画展があり
行ってきました。

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 和田誠さんはイラストやグラフィックデザインで
多くの作品を手がけている方ですが、
私が初めて知ったのは
1988年の映画 『快盗ルビィ』 です。

もう20年も前の映画ですがいまだに好きな作品です。
その後、三谷幸喜さんの本の表紙でよく見かけるようになりました。

 今回は近年の絵本の原画を中心とした展示で
中でも最近復刊したという 『ぬすまれた月』 は
背景が黒で絵はシンプル、まったく古さを感じない洒落た作品。

他にも 『注文の多い料理店』 や映画の場面を描いたものなど、
バラエティに富んだ内容でした。

 シンプルでおしゃれというとディック・ブルーナを思い浮かべます。
この方もたしかグラフィックデザイン畑の人ですが、
やはり見せ方を知ってる方々は違います。




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by HiDe-pastel | 2009-09-06 22:20 | 画家 | Comments(0)
男鹿和雄
 男鹿和雄さんはアニメーションスタッフで
おもに背景美術を担当されてる方です。
絵本の挿絵も描かれています。

 私が風景画を描いていこうと思ったのは東山魁夷の作品を見てからですが、
初めて風景を描きたいと思ったのは実は宮崎作品を見てからです。

 もう25年ほど前
『カリオストロの城』でアルプスのような山々の背景を見て
「これすげー、これ描けるの?描いてみたい」
とその辺の紙に描いたのが初めてでした。

 『となりのトトロ』も『魔女の宅急便』も『もののけ姫』も見真似で描きました。

 2007年から2009年に全国で原画展が開催されたときに
初めて男鹿さんの描いた原画を拝見しました。

 「これが人の手で描かれたものかい?」
と思わず唸ってしまう完成度と密度の高さ。

 『となりのトトロ』の大樹
 『もののけ姫』の深い山々
 『おもひでぽろぽろ』のベニバナ畑 etc

 ほんとうに実際にありそうな存在感と空気感。
唸った後はため息が出ます。


 またどこかで男鹿さんの絵が見られるかな?
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by HiDe-pastel | 2008-05-25 15:26 | 画家 | Comments(0)
荻原碌山
安曇野の旧穂高町が、地元の彫刻家・荻原碌山の作品を保存し
多くの方に見てもらおうと寄付を募り建てたのが『碌山美術館』。

安曇野のシンボルとして有名になった、教会風レンガ造りの建築と蔦の外観。
4月下旬でまだ芽吹き始めたばかりでなんとなく殺風景でしたが、
レンガの赤焦げた色が桜の舞う中、異彩を放っていました。

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碌山の作品は荒々しくてぶっきらぼうな印象で、以前は好きではなかったのですが、
20数年ぶりに見たらその荒々しさがエネルギーに満ちていてすごいと思いました。

躍動っていうのか、「たった今大地から生まれました」っていう瞬間的な塊のような。
例えるなら「宇宙戦艦ヤマト」第1話で地面に半分埋まってた錆びついたヤマトが
その全容を現した瞬間の、あの圧倒的な存在感
みたいな。

美術館が開館50周年を迎えたことに敬意を表したいです。

正直、華やかさがある作品ではないと思うんですよ。
当時にしてみても「碌山の作品が見られますよー」といって
そんなに食いつくとは思えないし、実際厳しい時期もあったと聞きます。

それでも地元の人たちが、「観光・採算」ではなく碌山を大切に思って
守ってきたことがとてもすごく大きなことだと思いました。

私が子供の頃住んでいた家は碌山の生家とご近所さんで、
祖母は少し交流があったそうです。
美術館が建つ前まで作品は生家の蔵に保管されていて、
祖母は時々蔵に入って見せてもらっていたそうです。

そんな縁もあってか小さい頃から碌山の名前は身近にありまして、
見かける彫刻はすべて碌山だと思うほどでしたが
夭折した碌山が遺した作品は実はわずかなんですね。

30歳の時に新宿中村屋で吐血、2日後に亡くなることに。

最期の作品『女』は代表作の冠とともに国の重要文化財に登録されました。
ブロンズ像の元となる石膏像は東京国立博物館に収蔵されています。
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by HiDe-pastel | 2008-04-25 02:03 | 画家 | Comments(0)